日常に馴染む「赤系」ダイヤル特集
Grand Seiko
「赤系グランドセイコー」が
実はオールマイティな理由
ここ数年、高級時計市場ではカラーダイヤルが一気に増えている。
しかしそのバリエーションは、グレーやブルー、グリーンなど、
メンズファッションに取り入れやすい色ばかりであった。
ところがここにきて、赤が注目色として浮上しているのをご存じだろうか?
スイスのマニュファクチュールブランドやジュエラー系ブランドの赤い時計も話題だが、発色が美しく、豊かな表現を持つグランドセイコーの赤い時計も注目されている。
難易度が高そうにも思えるが、実は赤は様々なシーンに馴染む色でもある。
その理由を、グランドセイコーを用いて解き明かしていこう。
グランドセイコーの赤に秘めた秘密
色彩心理の本を参考にすると、赤は「エネルギーを象徴する色」であるとされる。赤は太陽や血液、炎など、人間の生命に直結する色でもあるため、興奮、強い、情熱的、などアクティブなイメージを想起するのだろう。また赤が生命と直結するということから、赤を使うことでパワーを得るという考えも生まれた。政治家が演説など大切な場面で赤いネクタイをするというのはその一例であり、自分を鼓舞する一方で、相手に圧力をかけるという意味でも赤を取り入れるのだ。
また日本では、朱塗りの鳥居に代表されるように魔よけの意味もある。であれば、人体の急所である手首に赤いものを取り入れることは何の不思議もない。赤い時計というのは、文化的にも色彩心理的にも理にかなった選択肢なのだ。
しかもジェンダーレスな機運が高まったことで、男性が暖色系のカラーダイヤルを選ぶこと自体に対する違和感が薄れたという背景もあるだろう。そのためスイスの時計ブランドからも、赤い時計が数多くリリースされるようになっている。
グランドセイコーでも、これまでに幾つかの赤い時計がリリースされた。最新モデルである「Heritage Collection 44GS メカニカルハイビート 36000 SBGH345」は、グランドセイコーブティックオンライン専用モデルであり、深みのある緋色のダイヤルは岩手山の山肌を美しく染める朝焼けをイメージしている。この時計は赤に秘められた物語も一緒に楽しむ時計なのである。
繊細な凹凸模様で、岩手産の山肌を表現。緋色に処理した後ラッカーで仕上げており、光沢が美しい。
日常に馴染む「赤系グランドセイコー」
赤い時計が文化的にも色彩心理的にも理に語った存在であることは説明したが、使い勝手はどうだろうか? たとえばカラーダイヤルの定番であるグレーやブルーであれば、メンズファッションにも多く用いられる色なので、普段のコーディネートの中にも馴染ませやすいし、ビジネスシーンでも違和感はないだろう。またトレンドカラーであるグリーンも寒色であるためダーク系のコーディネートに取り入れやすく、さりげないアクセントとして効果を発揮してくれる。
では赤系グランドセイコーはどうだろうか? グランドセイコー「SBGH345」は、赤は赤でも“緋色”と呼ばれる色でダイヤルを仕上げたが、光の当たり方によっても、かなり受ける印象が変わる。
[SCENE 1]朝は赤いダイヤルが映える時間 |
朝の強い光は、緋色が最も華やかに見える時間帯。気持ちを入れて一日を始めるためにも、パワーみなぎる赤系グランドセイコーを身に着けたい。
[SCENE 2]気持ちよく働くビジネスカジュアル |
在宅ワークも増え、スーツを着る機会が減った。そういうときでも気分を高めるためには、赤い時計は有効だ。赤の美しさを引き出すなら、シンプルなコーディネートでまとめたい。ビジネスカジュアルの定番アイテムであるニットポロも、黒を選ぶと時計の赤が一層際立ってくる。
[SCENE 3]外回りビジネスマンのアイコニックな腕元 |
色の個性が最も強く出てくるのは、太陽の下。ビジネスマンであれば、外回りの時などにカラーダイヤルの効果を実感できるだろう。赤いダイヤルの個性を生かすなら、スーツはグレーくらい控えめな色味がちょうどいい。ネクタイに赤系の小紋を取り入れると、さりげないリンク感が生まれる。
[SCENE 4]リラックスした休日の時計として |
休日の昼下がりは、話題のカフェへと出かける。オフの日もアクティブに動いて情報を収集する男に腕元には、情熱的な赤系グランドセイコーがよく似合う。
[SCENE 5]ディナータイムに映える、赤系グランドセイコー |
明るさをおさえたレストランでは赤い時計もシックに見えるので、華やかさよりも知的なムードを演出できるだろう。こういう時は赤と相性の良いブラウン系のアイテムと合わせることで、全体的に暖かなコーディネートでまとめたい。
[SCENE 6]夜のリラックスタイムも、この時計と |
仕事を終えて帰宅したら、部屋の光を落として、ゆっくりとした時間を楽しみたい。薄暗い部屋では、赤の色合いはしっとりと深くなる。その表情もまた美しい個性なのだ。
「SBGH345」は、グランドセイコーの伝統デザインである44GSのスタイルを継承しており、そのケースのシャープな造形美には、タイムレスな魅力がある。また40mmというケースサイズやエバーブリリアントスティールならではの美しい輝きは、シーンを選ばず使えるだろう。しかしさらにそこに緋色のダイヤルが加わると、華やかな個性が生まれる。アイコニックな定番モデルだからこそ、この“+α”が効果的なのだ。
赤系グランドセイコーは、色もスタイルも美しい
右から、「Elegance Collection メカニカルハイビート 36000 GMT SBGJ273」、「Heritage Collection44GS メカニカルハイビート 36000 SBGH345」、「Elegance Collection SBGW287」。赤系モデルとはいえ、その表情は個性がある。
現在グランドセイコーブティックオンラインで取り扱う数量限定モデルを除く赤い時計は3種で、それぞれにコンセプトの異なる赤を採用している。
グランドセイコーブティックオンライン専用モデルである「Heritage Collection44GS メカニカルハイビート 36000 SBGH345」(写真中央)のダイヤルは、濃く明るい赤である緋色。メカニカルモデルが生まれるグランドセイコー スタジオ 雫石の眼前に広がる雄大な岩手山の山肌をイメージした微細な凹凸を型押し技法で表現し、そこに山肌を染める朝焼けの色合いをイメージした緋色のダイヤルをつくり上げた。
ハイビートムーブメントを搭載するGMTモデル「Elegance Collection メカニカルハイビート 36000 GMT SBGJ273」(写真右)は、日本の風土や文化の中にある”赤“を表現したモデル。型打ち技法で表現した縦のストライプは、寺院などに用いられる漆仕上げの板張りの床をイメージしたもの。漆で仕上げることで床には美しい光沢が生まれるが、ここに色とりどりの紅葉が映り込む「床もみじ」の光景を、時計のダイヤルで表現した。さらにGMT針を金色にすることで、より華やかさが増している。
「Elegance Collection SBGW287」(写真左)は、季節の中にある”赤“を映しこんだ。日本には季節の移ろいを二十四に分け、それぞれに美しさを見出す二十四節気という考え方がある。「Elegance Collection SBGW287」の“赤”は、秋から冬にかけて移ろう季節を表す「暮秋(ぼしゅう)」を表現したもの。寒くなるにつれて山々の木々が美しく色づき、少しずつ深い赤色に移り変わっていく様子が、この濃いワインレッドで表現されている。37.3mm径の小ぶりなケースは柔らかなフォルムを持っており、そこに深みのある赤いダイヤル組み合わせた。カレンダーもついていないので、ダイヤルの美しさが際立っている。
この三本はどれもが“赤”だが、それぞれに色調や背景に隠れた物語は異なる。グランドセイコーの技術と表現力を楽しむなら、赤系グランドセイコーも選択肢に入れておくべき時代なのだ。
取材・文 / Report & text:篠田 哲生 / Tetsuo Shinoda
写真 / Photo:江藤 義典 / Yoshinori Eto
スタイリスト / stylist:仲唐 英俊 / Hidetoshi Nakato